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BESSA R2A

 
 
 
 
 
       BESSA R2A

 
 (BESSA R2A+COLOR SKOPAR50mmF2.5BK) 


勝手にインプレッション

2000年にコシナからベッサRが発売されたとき、世のレンジファインダーマニアは色めき立った。まさか21世紀にもなって、露出計を内蔵したレンジファインダー機が新製品として出てくるとは、誰も考えていなかったからだ。しかも、命とも言える距離計の出来が想像以上に良かったため、ベッサRは、一躍ライカと比較対照されるようになった。
 
チープな路線に徹し、実用カメラとして一定の評価を確立したベッサRであったが、貪欲で口さがないマニアたちは、口々に
「プラスティックボディは品位や高級感に欠ける」
「Lマウントだとレンズ資産が生かせないから、Mマウント版が欲しい」
「構造上、沈胴レンズが使えないのは不便だ」
「距離計連動範囲が狭い」
などと文句を並べたてた。

はたして2年後の2002年4月、それらほとんどの要望を満たす形で、マグネシウムボディに身を包んだMマウント互換機「ベッサR2」が登場する。プラスティックとは明らかに違う剛性感と、汎用性の高いマウントのお陰で、Rから買い換えるオーナーが続出した。
しかしどういうわけか、ファンが最も望んで止まなかった部分、すなわちAE化だけは、R2では実現されなかった。「ベッサはライカになろうとしてはいけない」「AE化は考えていない」と事あるごとに発言していた小林社長だったので、コシナ的なベッサの着地点はR2だったのかもしれないという意見もちらほら聞かれるようになり、同じように感じたエンゾーは、ちょうど安原一式の内面反射に手を焼いていたこともあって、満を持してR2に乗り換えた。

ところが…2004年も終わりがけになって、彗星のごとく現れたのが、AE化されたベッサの完成形・R3A&R2Aだったのである。

万人がR2でほぼ完成されたと思っていた部分を、コシナは執拗に改良している。まず、もっとも大きく変わったのは外観である。なで肩でやや不恰好だった軍艦部のデザインが、垂直に交わる直線のみで再構成されシャープなイメージになった。同時に、剥き出しだった巻き戻しクランクもデザインが変わり、往年のマニュアルカメラによく見られた筒型になった。実際にクランクを引き起こして撒き戻してみると、R2よりもスムーズになっている。同様に、撒き上げレバーの軸にもベアリングが内蔵され、R2まではゴリゴリしていた巻き上げの感触が、ずいぶん滑らかになった。

その他、レバーやダイヤルなど手に触れる部分の滑り止め加工の作り込みが、R2と比較して明らかに向上しているのはさすがである。小さな変更を積み上げていった結果、全体としてグンと高級感が増した。質感や外観の面で、気分的に実用機としての割りきりが必要だったR2までのモデルと違い、持って愛着の湧くカメラへと脱皮している。
 
AEは、癖のない平均測光である。デフォルトでもよく当るし傾向が掴みやすいので、露出決定で迷うことはほとんどない。が、シャッターを押すときに、露出計が作動してから実際にレリーズするまでの押し込みの深さ…いわゆる「二段押し」の感覚が分りにくく、切るつもりのないシャッターを切ってしまうことがたまにある。
シャッター音は相変わらずにぎやかだ。が、R2よりは多少ましになった。
 
話は前後するが、兄弟機であるR2AとR3Aは、ファインダー倍率と出現するブライトフレームに違いがある。R2Aが35mmの使用を意識して倍率を0.7倍に抑えてあるのに対し、R3Aはなんと等倍、つまり素通しである。そのため、R3Aの一番広いブライトフレームは40mmだ。これは、ほぼ同時に発売されたノクトン40mmF1.4に対応したものだが、当倍ファインダーでは、正直40mmでも全視野を見渡すためにぐるぐる目を回さなければならず、お世辞にも使いやすいとは言い難い。

エンゾーが最初に買ったMマウントのレンジファインダーはR2だったが、ライカの購入後にぱったり使わなくなったため、もったいないので放出することにした。入れ替わりで、AE化を果たしたR2AかR3Aを導入しようと思い、どちらを買おうか一ヶ月ほど煩悶した挙句、結局何本もある35mmを有効活用するために、R2Aを選んだ。この選択は正解で、その後R4Aと買い換えるまで、R2Aは治安の悪い国へ行く時の切り込み隊長として活躍した。


さて、実際に使ってみると、やはりAE機は便利だ。ピント合わせに集中できるので、撮影テンポが良くなる。フルメカニカルで横走りシャッターであるライカの場合、最高速の1/1000秒だとバウンドが怖くてピーカンの青空などは撮りたくないが、円熟の域にあるベッサのシャッターユニット(コパル製か?)は、1/2000秒まで安心して使える。わずか一段分とは言え、ライカよりシャッタースピードが稼げるのはありがたい。AEロックボタンの操作性はイマイチだが、この辺はご愛嬌である。
ファインダーの見え味が素晴らしいことに関しては、今さらエンゾーがくどくど言うまでもない。スカッとクリア(清涼飲料水のコピーみたいだが)で、気持ちが良い。

しかしなんと言っても特筆すべきは、これだけ至れり尽くせりのカメラが、ベッサR2より3000円も安くなったという点である(R2ブラック・78000円に対し、R2Aは75000円)。新たに軍艦部の金型を起こし、パーツの加工も手間が掛かっているにもかかわらず、いったいどうやって安く出来たのか。コシナという企業の底力を感じずにはいられない。

このカメラ、はっきり言って欠点らしい欠点がない。R2Aで満足できなければ、あとはもうライカかヘキサーRF、もしくは兄貴分にあたるツァイス・イコンに行くしかないが、ライカで撮れてこのカメラでは撮れない絵があるかと問われれば、決してそんなことはないのである。

【2007.8.11追記】
鳴り物入りで登場したツァイス・イコンの陰に隠れて、R3Aがひっそりとディスコンになった。やはり、裸眼ですら40mm枠の全域を見渡すのが難しかった等倍フレームは、話題性はあったが実用面でR2Aに劣り、セールス的にも厳しかったのだろう。この辺の見切りの早さが、コシナらしいと言えなくもない。
それにしても、基線長がR2Aよりも長いという以外にこれといって決定的な差がないツァイス・イコンを見ていると、改めてR2Aのコストパフォーマンスの高さを思い知らされる。



長所

○最も安価で、かつ「使える」AEレンジファインダー機。ライカにも劣らぬスナップシューター。
○全体的に高級感が増した。結果として、安原一式とデザインがそっくりになったのはご愛嬌。
○巻き上げ・撒き戻しがR2よりスムーズになった。
○クリアで見やすいファインダーは、お世辞でなく、ライカにも劣らない。

短所

●スペック上、28mmや90mmは使いにくい。
●AEロックボタンは、押えながらシャッターを切らねばならず、使いにくい。惜しい!
●伝統的に大きなシャッター音。R2より若干静かにはなっているが…。
●どこからが2段目なのか、レリーズの感触がいまひとつ分りにくい。

超個人的オススメ度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆

偏愛度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆☆

Yahooオークション出現率(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆☆

*R3Aとどちらにするか悩むところだが、当倍に特別思い入れがなければ、R2Aの方が実用的。



 



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